中学生残酷物語

仕事場の移転先が決まったよ! やったね! 仕事が減ってるのにだいじょうぶかな? みんな、オラに仕事を分けてくれ!(あるいは一般事務OLの席を用意してくれ)
仕事場移転計画のあれこれはほっといて、今日は思い出話でも書くかい。ひさしぶりに。前回のコメントでリクエストされたので、書きたくなりました。ありがとうございます。別にたいした話はないんですけど。仕事をする前の景気づけに。
わたしがこんなふうに基本的にポジティブじゃないのは、小学校のときの体育のせいじゃないかと個人的には思ってるんですけど。だからまた体育トラウマネタを書こうかな。
ね、だって体育はさ、見せ物になるじゃないですか。
勉強はね、あるていど誰ができて誰ができないかは分かっても、点数がさらされるわけじゃないからそこまで恥はかかんと思うんですよ。せいぜい先生に当てられたのに答えられなくて恥ずかしい、ってくらいでしょう。体育となるとそうはいかん。みんなの前でやらされるから、すべてさらし者なんだ。周回遅れのデブ夫くんが死にそうな顔をして校庭を回っている姿を、ゴールしたやつらは涼しい顔で見ているのだ。小学校の体育ってのはそういう残酷な時間なんだ。へっどうせスポーツのできるやつらには分かんねえことよ(と当時の私は思っていた(ごめん今も思ってる))。
しかし、中学へとあがって少々要領のよくなった私は、前ほど体育がきらいではなくなった。すなわち、とにかく現場から逃げることを覚えたのです。
バスケでは、積極的に動いているふりをしながら、マークしてくる敵の後ろにみずから回る! これならボールは来ない。見た目にも、「がんばってるけど下手だからマークされちゃう人」です。ボールが回ってくることすなわち恥をかくことですから、なんとしても自分にボールが回らないようにしないといけません。バスケでドリブルをしようとするとボールを蹴っちゃうからね。あぶないあぶない。
サッカーはもっと簡単。コートが広いので、広く使えばいいのです!
もちろん、サッカーがうまい人にとっての「広く使う」じゃないです。広いコートの、どう考えてもパスが回ってこないようなところにいればよい。いまボールが動き回ってる現場から離れちゃえばいいんだよ。サッカーでボールなんか回されたらそりゃ大変だよ。1回蹴ったらボールが意外な感じで飛んでいってしまってドリブルなんてできないんですからね。あと親指の爪が痛いし。
ところで、体育がへたな人にとっての本当の敵は何か。さらし者になるわけだから、一見バカにして笑ってくる人が敵だと思われるかもしれない。しかし、いざ現場に行けばあなたも分かるでしょう!
それは「励ましてくる人」です!!!!!
「そんなのもできねーのかよ! ウヒャヒャ」というのに対しては、「えへへ〜そうなんスよ〜オレっちドンくさいんでやんす」って言えばいいんです。
「がんばろうぜ!! 誰だって努力すればできるさ! 楽しもうよ! オレだって昔は〜」っていう人が、もうね、もうお前は、努力でなんでもできると思うなよ!!! アンタなぁ、オレも昔は……っていうけど、小中学校いっしょなんだからアンタの昔は知ってんだよ! アンタ昔っからできる人じゃねーかよ! なんか、がんばらなかった私が悪いような気がして劣等感ドンさらに倍、なんですけど!
で、授業でサッカーやっててね、例によって私はボールから遠く離れたところにいたわけ。味方が攻撃されてるときに、相手側のゴールのそばにいたんだよね。
当然ボールがぜんぜん来ないから、うっかり私は油断してたんだよなー。たぶん靴で地面に絵とか描いてたんじゃないかな。
ふと顔をあげると、味方の中島くんがひとりでドリブルしてこっちに向かってくるの。
中島くん(サッカー部)は、さっきの味方ゴール前のごちゃごちゃの状況をうまくすりぬけてきたわけね。本来ならここで私はボールをよけなきゃいけないんだけど、いい顔で走ってくる中島くんを前にして、ちょっと迷いが出た。今まではわりとナチュラルにボールから遠いところにいたけど、ひとりで進んできた中島くんをよけるのはさすがに露骨すぎる。
ちょっと固まってしまった私の横をすりぬけて中島くんが華麗にゴールを決める……ならいいじゃない。てゆーか、そうすりゃいいじゃない。中島くんかっこいい! ってことになるじゃない。中島くんの実力ならキーパーと一対一で難なくシュートが決められたはず。
でも中島くん、「励ましてくる人」タイプだったんです。
なにを血迷ったのか、あのとき中島くんはさ、「へい! シュート!!」って言いながら、私に絶妙(たぶん)のパスを出してきたよね。そのパスがまた、とっても勢いのゆるい、運痴の私を気づかうすばらしいパスだったよ。
まあ中島くんの考えでは、あそこまで好アシストをしてやればどんな運痴でも100%ゴールだろ、ってことだろうね。だって、ゴール前には中島くん(キーパーがマーク)と私(完全ノーマーク)しかいないんだから。そしたら運痴な私もサッカーの楽しさに目覚めるってわけだよね。
しかし、へい! ってなんだろうね。へい! って。30年間生きてきたけどたぶん言ったことないよね。
「あ〜ここでシュート決めないとものすごい気まずいんだろうなー」って0.05秒くらい思いながらわたしはゴールのほうに向きを変えて、でも左からボールが来たから、とっさに左脚で蹴ろうとした。利き足じゃない方で。(こういうときって運痴は100%判断ミスをするんだよ)
ま、運痴さんにとっては、「向きを変える」と「蹴る」を同時にやるのがそもそもむりなんですよ。
カスッ ていう音がしたよね。
ボールが、靴の左脇にかすかにあたったみたいです。
ぬるーい速度でサッカーボールは正面から左に70°くらいそれた方向に転がっていきました。
たぶん45°くらいまでならゴールに入ったんだよね。
あのね、そういうときは中島くんには怒ってほしいの。「なんであんないいパスしたのに入れねーんだよ!」って言ってほしいの。
中島くんは「ドンマイ!」って言って肩をたたいたよね。
うっわー。もう。うっわー。
中央方向にもどっていく中島くんの背を見ながらいまこの瞬間に彼は何考えてるんだろーって私は原稿用紙10枚分くらい考えて、舌かみ切って死にたくなるだろ。な、しょうがないだろ。そこに流れるぬるーい毒素みたいなのになぶり殺しにされるだろ。
わたしはそういうわけでサッカーもとてもきらいなのでした。
あ、なんかただの暗い話だった。べつにオチとかないや。
高校のバスケで、体育を拒否する輪田くんという話もあったんですけど、オチのない話が長くなったので終わりにします。
あ、あと、運痴の集まりだった中学弱小卓球部の話もあるよね。忘れないようにメモだけ。


しゃしん:小樽市街の北のほう。「貸家」って書いてある! 借りてみたい! けど、この家で暮らすのはたいへんだろうな。手前にある紅白棒は、雪が積もってもどこが道路だか分かるようにするための棒です。南のみなさまは知るまいふふふ。