布谷さんと滝本さん

布谷文夫さんのライブに行きました。
布谷文夫とは誰か。ブルース/ロック歌手です。そんなに知ってる方もいないと思います。私も詳しいわけではありません。
わたしは北関東で純朴に育ちましたので、文化的なデビューは大学に入ってしばらくしてからでした。音楽もなーんにもしらん高校生でした。大学2年くらいの時に友人に借りて初めてはっぴいえんどを聴いて、衝撃を受けて、そのころはっぴいえんど周辺をちらちらとあさっていました。
そんなとき、私のアンテナが強く反応したミュージシャンのなかに布谷文夫の名もありました。
とにかく泥くさく男くさい、存在感の強烈なダミ声のボーカル。1970年ころ活躍。
すぐ消されるかもしれないけど、とりあえず今youtubeにあるものを挙げてみます。きっと好き嫌いあると思うけど、わたしはこのダミ声がものすごく心に残ってよく聞いていました。ものすごくかっこいいと思う。
でも、ネットがいまいち発達してなかったそのころ、この方のプロフィールがまるっきり分からなかった。現在活動しているのかどうかも不明だった。写真も、ジャケットに使われてる数枚しか見たことがない。
最近、ふと思い出して、いろいろ調べてみたところ、なんとまだご活躍中だったのです。一度就職しつつも音楽活動はほそぼそと続けてらっしゃったらしい。はっぴいえんど世代なのでおそらく60代近いはず。病気をされたり大ケガをされたり、いろいろあったようですがまだライブはやっているらしい。これは機会があったら確実に見に行かねばならない。
ということで、荻窪の小さなライブハウスに、担当編集というかほとんど飲み友だちの土佐っ子を連れて見に行きました。きちんと予約をしておいたら、なんといちばん前の席になってしまいました(テーブルとイスのある、ジャズ向けのハコだった)。
楽器隊が登場してしばらく鳴らしていると、アップライトピアノの陰から、優しい目をした白髪のご老人が顔を出した。と思いきや、彼はチャッとラメ入りのサングラスをかけ、その瞬間に雰囲気が変わった。
わー。布谷文夫だ。この人が、あの、よく聞いていたすごい存在感の声を持つ、あの人が、この人だ。わー。
至近距離でわたしの目は気味が悪いほど輝いていたにちがいないね。
布谷さんの髪は肩にかかるくらいの長さで白髪まじり。小柄でやせていて、小さな顔に大きなサングラス。豹柄のシャツ。ややだぶついた灰色のジャケット。
出てきたときは失礼ながらだいぶ老人然としていたし、私が見た過去の写真では小太りのイメージだったので体調面でもちょっと不安を感じたけど、彼が声を出した瞬間に私はうちふるえましたよ。
CD(本当はレコードと言いたいけど、復刻版しか聴いてない)で聴いたものとほとんど変わらない。あのでこぼこした塊のようなダミ声がガスンガスン出てくる。ダミ声にごまかされるけど、布谷さんの曲のキーは実はけっこう高いのだ。その高いキーも難なく(というかもともと絞り出すような発声なのだが)ぶつけてくる。
衰えが感じられない。
途中、MCで「もう、四捨五入したら70だよ」「清志郎が、俺の8つくらい下なんだよなぁ」といってたので、66〜7歳くらいと思われる。
(ネット上のプロフィールで1947年生まれ(=62歳)というのが時々見られたのですが、彼がMCでこんな些細な嘘をつくとも思えないので、おそらく66歳が正確なんじゃないかな。)
このすごいエネルギーをわたしはどうにかなにかに残したくて、周りの人が写真を撮っているのに合わせてデジカメで何枚か撮ろうとしたけど、ライブハウスの暗さではデジカメだとぶれてしまう。デジカメなんてダメだ。何の役にも立ちやしねえ。いっそ描け。歌をそのまま浴びながら描け。
と、急かれたようにその場の紙ナプキンに描いた布谷さんの歌い姿がこれです。

わたしは自分の絵がヘタでヘタでしょうがないと思ってるんだけど、これだけはほんとうにすごくよくできたと自画自賛して、なんども眺めて、大事にひきだしにしまいました。
布谷さんは次いつライブやるか分からないのですが、ほんとうにね……ほんとに、必見です。どう伝えたらいいか分からん。年齢の話を抜きにしても、あんなボーカルは私はほかに知りません。もっといろんな人に知ってほしいです。かっこよすぎる爺です。
MCでは、孫をかわいがる爺さんっぷりとか、あの時代のすごい話(もったいなくてここには書けないけど、細野晴臣さんを○○さんが「オミちゃん」って呼んだ話とか)とかをポツポツと披露してくれて、そこもたまらんのです。アンコールほんとうは2曲やるはずだったのに、疲れたらしく、「もう、いいよ」って楽器隊に言ってやめちゃうし。自由。
ああ、布谷さんで字数を使いすぎてしまった。
滝本晃司さんのライブにも行きました。
滝本さんは言わずと知れた、たまの一員。分かりやすく説明すると「たまでいちばん地味な人」なのですが、たまでの滝本さんの存在価値の大きさはたまをしっかり聞けば分かることです。
わたしは生まれて初めて買ったCDがたまで、その後サードアルバムまで買いつづけるほど好きだったのですが、しばらく離れていました。そのあいだにもたまは地道にスタンスを崩さず活動を続けていたのですが、私のなかでたまリバイバルブームが起きたときにはすでに解散していました。
私のばかやろう。なんでライブに一度も行かなかったんだ。
しかし今日、たまのCDを初めて買ってから実に19年、ついにたまのメンバーにお会いすることができたのだ。
滝本さんのライブは一曲目がたま時代の曲で、わたしはそこでもうちふるえました。正直、ソロ時代の曲はあまり知らなかったのですが、あの空気に溶け込むような危うい低音のボーカルにふれられて満足です。きもちよくなってしまいました。
ああ、なんか、うまく書けないな。文章ってむずかしい。
とにかく私は2日連続でほんとうによいものを聴いた(観た)ということを書きたかったのです。
おしらせを少々。
PLANETSというミニコミ誌(でいいの?)にちょっとだけ書きました。平たく言うと、有吉弘行が大好きです、みたいなことを書きました。大したことは書いてないですが、ちょっとしたおまけがあります。
まいこさん。え、マジで? なんかそれ、こちらこそすいませんって気分……。すいません。笑