すもうにっき

nomuch2008-10-07

満を持してというかなんというか。書きたいときに。熱いので注意です。
きのう、例によって伊集院さんのラジオを聞いていたら、さすが伊集院様、すばらしいことを言っていました。全面的に同意しましたので、内容をかいつまんで。
八百長うんぬんって騒いでるけど、八百長があるかないかってのは、相撲協会とファンの間の話じゃないの? 暴行死事件や大麻を報道するのは分かるけど、八百長の報道はどうでもよくない?」
そうです!!! そこだよ!
あとね、石原都知事も珍しく、いいことを言ってたとおもう。詳しくは忘れたけど。
あの、まずわたしは相撲協会にいたわけでもなんでもないので、今から書く話はほとんどが推定です。いちおう、それを大前提に書きたいのですが。
さきにサクッとわたしの意見を書くと、八百長はあると思うよ。でも真剣勝負が基本にあっての話。
そして、いちおう15年モノのファンとして言わせてもらうと、多少の八百長は別にいいとおもう。
大相撲っていうのは、どうも一般的にはスポーツだと思われているようですが、スポーツではないと思います。興行です。いわば見せ物です。野球と歌舞伎とどっちに近いかと言われたら、歌舞伎だと思います。アマチュアの相撲と大相撲は、まったく違うものだとおもうんです。だから行司がいるし(アマチュア相撲には行司がいません。審判といいます)、変な髪型(大銀杏)にするし、塩をまいたりするんです。
江戸時代には、大童山という力士がいました。大童山はなんと7歳です。7歳でもものすごく太っていて、土俵入りが絵になる、ということで、土俵入りだけをしていました。そんな力士もいたんです。優勝という制度ができたのも、明治末になってからです。そもそも、「力比べ」ではありますけど、競うことがメインではなかったんです。
そこから、明治になってスポーツという文化が導入されて、なんとなく大相撲もスポーツの流れに乗っかってしまいました。いつのまにか「正々堂々勝負する」という小綺麗な価値基準が入ってきて、見ておもしろい出し物というよりは、スポーツマンシップ(って何だよ)にのっとった真剣勝負があたりまえとおもわれるようになってきたんです。たぶん。
プロレスラーに、上から目線で「あれって八百長なんでしょ?」っていう人がいたら、やっぱりその人はバカですよね。そして、もしそういうことを聞かれたら、プロレスラーは「バカ野郎! 俺たちは真剣勝負をしてるんだ!」と激怒してみせるでしょう。それはある意味ウソではないと思う。また、もし私がテレビのコメンテーターだとして、「能町さんは八百長があると思いますか?」と聞かれたら、しれっと「ないと信じたいですね」などと答えるでしょう。この意見もウソではない。
でも、八百長はあるとおもうんですよ。そういうものなんですよ。
ただ、プロレスと違うのは、そのへんがもっとタブー視されているというか、わりと大半が真剣勝負だというか、プロレスみたいにシナリオがあるほどではないというか……そこのバランスが非常に微妙だと言うことです。
わたしは、中1くらいのときに大相撲にはまり、中3くらいのときに、たまたま読んだ本で「大相撲の八百長疑惑」について知りました。知ったときはそれはショックで、信じられませんでした。しかし、その本は大筋で信憑性があるとおもえてしまい、自分のなかでいろいろ考えながら、消化するに至りました。
たとえば。(ここから先の話は、大相撲のことを知ってないと分かりにくいかもしれません。すみません)
千秋楽、自分は幕内中位で4勝10敗。今日勝っても負けても来場所は幕内下位で、位置はさほど変わらないと予想される。対戦相手はベテラン、幕尻で7勝7敗。これに負けたら十両落ちは確定で、給料も下がる。
「わりぃ、今日負けてくれねえ? ラーメンおごるわ。あ、今度当たったらオレが負けるってことでもいいよ」
私がこれを持ちかけられたとしたら、断らない。大相撲はほんとうにハードな競技ですから、真剣勝負はケガと表裏一体です。ここで本気で勝負して相手に勝つことにほとんど何のメリットもないので、うまいこと負けてあげると思います。一般の大相撲のファンは(あるいは大相撲に何の興味もない人は)、このくらいのやりとりまで許せないんだろうか。ぜったい何が何でも真剣勝負なんでしょうか。そこは私にはいまいち理解できません。
でもこれが、初日だとして、「角番だし、今日勝っていかないと調子出ないんだよ。100万出すから負けてくれ」
これはいやだ。大金がからんでくるとなんだかダーティ。若ノ鵬琴欧洲に上のようなことを持ちかけられたと週刊誌に出てましたけど、それがもしほんとうだったとしたら、白星1つ100万という金額設定がまかりとおっている実態がちょっと薄気味悪い。多少のお礼的なもの(とても日本的です)があるのは分かるけれど、大金のやりとりはちょっとどうにかしてほしい。
「今日負けろよ。負けなきゃ『かわいがり』だ」
これは論外。いわばパワハラです。
そういうわけで、八百長と一口に言っても、許しがたいものと、そのくらいはいいんじゃないの? って思えるものがあるとおもうんです。おそらく昔はもっと見せ物らしく、おおらかで、勝ち負けに多少のシナリオができてることもあったんじゃないかと思ってます。ただ、確実に言えるのは、ほんとうに強い人じゃないと幕内などの花形にはなれないし、横綱だって、そこまでの力がないと上がれないということです。
八百長について、今まで相撲協会では「いや、真剣勝負ですよ。だから週刊誌で言ってることなんて相手にしません」と、プロレス的にうまくかわしてきたと思うんです。それを、どういうわけか裁判で全面対決するとか、「八百長は一切ない」だとか、ああもう、なんで協会はそんなふうにマジになってケンカを受けてしまったのか。「今までにも一切なかった」と言い張るのはさすがにムリだとおもう。確かに、大きな金銭授受とかパワハラ系のものとか、明るみに出してほしいものはあるにはあるし、協会だってそのへんはどうにかしたいと思っているだろうに、もう少しうまい対応策はなかったものかと。やるせないです。
そしてまた、八百長の証言をする人が、だいたいそろいも揃ってうさんくさい。前々から八百長ネタになると顔を出す板井という元力士、この人は稽古を全くしないうえに素行不良という理由で、親方になることを協会から却下されたという異例の人です。また、本人自身が八百長中盆(仲介役)をやっていたという話もあり、八百長に乗ってこない横綱大乃国(←あくまでもうわさですが)には毎回むちゃくちゃに張り手を浴びせまくっていた力士です。そんな元ダメ力士がいけしゃあしゃあと「大相撲は腐っている。八百長が横行している」なんて言っているのです。
また、今回暴露しはじめた若ノ鵬も、言うまでもないですが大麻で解雇された力士。これはむしろ若ノ鵬が悪いというより「使えるバカが出てきたぜ」とばかりに、いいように使っていそうな週刊現代が怖い。若ノ鵬の所持金が800円だったなどとどこかに出てましたが(月に100万単位で給料がもらえていたはずなのにいったい何に使っていたのか、そこも疑問)、お金がなければ週刊現代の甘い話に乗るのも納得がいきます。大相撲に戻りたいといいながら「ボクが汚い大相撲をきれいにする」なんて、大麻で解雇されといて何を言っとるんじゃ、と誰でもつっこみたくなるでしょう。この裁判がどう出ようと、若ノ鵬に未来はありません。解雇されて路頭に迷うハタチの若ノ鵬はいいだけ使われたあげく、裁判が終わったら放り出されそうです。むしろ若ノ鵬に少し同情してしまいます。
だから板井も若ノ鵬も正義感じゃなくてお金のためにやってるのでして、八百長も(おそらく大半は)お金のためにやってるのでして、どっちもどっちです。
あ、いきおいで書いているので論点がずれてきた。ちょっと1行休憩。
だから、八百長は、私の姿勢としては「週刊誌で言われるほど多くはないとおもうけど、たぶんある。そこに大金の授受があるのは個人的には嫌。そしてパワハラのような強制があるなら明るみに出してほしい。でもそれ以外なら、なんというか、江戸期から続く大相撲とはそういうものなのだから、そこはあえてあやふやのままにして、あくまでも真剣勝負を前提として、おもしろい取組を見せてほしい。あと、鬼の首を取ったように『大相撲に八百長はやっぱりあった!!』っていう週刊誌は『衝撃!プロレスは八百長だった!!』っていうくらいヤボ」これが結論です。
「お金を払って見に来てるのに、真剣勝負をしないとは何ごとだ」という意見もあります。が、大相撲には地方巡業というものもあり、これもみなさんお金を払って見に来ていますが、素人目に見てもみんな「全力の真剣勝負」はしていません。巡業でケガをするほどバカバカしいことはないからです。でも、きちんと「魅せて」いるはずです。なぜかこれを八百長と呼ぶ人はいません。大相撲は見せ物だからです。
だから、元に戻るんですけども、八百長のあるなしはファンの間だけの問題なんじゃないでしょうか。あくまでも真剣勝負として取組を見て、あっさりと負ける力士がいたら「いまのは注射(=八百長)じゃないか?」とファンから非難が来る。この程度のあり方なんじゃないかとおもいます。国民レベルで議論する話じゃないっしょ。てゆーか、10年単位で大相撲ファンを続けている人で、八百長が全くないと信じている人なんているんだろうか。週刊誌やテレビで言われる「ファンを裏切る云々」って言葉はかなりしらじらしい。
あ、そうだ、週刊誌の論調だと朝青龍が大ボスとして八百長を仕切ってたことになってるみたいですけど、正直それについてはよく分かんないです。平凡な言葉ですが、「そうであってほしくない」としか言えません。要は横綱の地位を守るためにちょいちょいお金を払って負けてもらっていたということですよね。ま、もし本当だったら朝青龍はある意味とても信頼されているということになると思うんですけど、あんまりそんなふうに見えないし、八百長だったらダメ押しする必要ないし、今場所だってカネ払って勝てばいいのにそれをやらずに休んじゃったわけだし、信憑性は低いような気がするんですけど。微妙です。
長くなりすぎて大麻ネタに行けなかった。
あーあちぃあちぃ。もうね、仕事しろよ。しのはらさんすみません。
※いろいろ考えて、書き終わってから何度も本文なおしました。大意は変わってないですけど。


しゃしん:せっかくだから相撲の写真を出します。現役で最大体重の、ロシア出身の大露羅(おおろら)ちゃん! ぶよぶよ! 超かわいい! こんなに大きいのに、どうにか幕下に上がれたくらいでけっこう弱い! 実際に見ると、立ってるだけですごい疲れてそう! たぶんおとなしい草食動物です。