ミハメタ

ことしの夏のこと、実家に帰ると、母が「こんなおもしろい番組があったから録画しといた。ヒマなら見たら?」というようなことを言う。これはいつものことです。母は情熱大陸とかいつみても波瀾万丈とか、そういうのが好きなのです。テレビをまるで見ない我が子のために録画してくれるのです。正直、興味ないとおもうこともあるけど、大当たりもある。なにしろほんとにテレビ見ないんだからね、私ってやつは。
で、ことしの夏に見せてくれたのは情熱大陸内澤旬子さんの回で、おおあたりでした。わたしはそれで初めて内澤旬子さんを知った。いや、じつはイラストは前からある雑誌で見ていたのだけど、名前までは把握していなかった。そのお仕事ぶりももちろん好きなんですが、なんといってもその態度、単に好きだから、というか、もっというと興味本位で首をつっこんだことが結果として社会に影響さえする、というようなかんじ。本人はべつに、ただ気のおもむくままにだらっとやっているような、病気さえそのじぶんの流れにとりこむような、そのかんじ。そこに、なんだろうね、シンパシーっていうとちょっと傲慢なんですけど、やっぱり憧れになるのかなあ、ときめきでもいいけど、そういうものをかんじたのです。すごくかっこいいとおもった。世界屠畜紀行、買おうっておもった。
そして、わたしってやつは、見ようとおもってた映画の9割はとっくに終わったあとに「みのがした!!」と後悔するような私は、とうぜんのごとくすぐに内澤さんのことを忘れてしまったのでした。
しかし1か月前、例の一角座(10/4のにっき参照)に初めて行ったとき、まあ席がスッカスカできもちのいい映画館でしたが、座って上映を待っていると、前から知ってる人が入ってきたんだよな。あ、あの人見たことある、あ! 屠畜紀行の! 名前なんだっけ! わー! とミーハーメーターがふりきれまして、映画が終わったら声をかけちゃおう! とまたまたノープランで思ってしまったのである。
そして上映終了後、まったく話す内容もないくせに単なるミーハーで内澤さん(と、その夫の南陀楼綾繁さん)に話しかけてしまったのでした。名前は映画上映中に必死でおもいだした。
私がミーハーメーターふりきっちゃうような方って、どうしてもミーハーに話しかけられる経験の少ない方たちなので、私みたいに意味もなく話しかけてくる人に対して慣れていなくて、そこが、もうしわけないです。おもえば前にもわたしは新宿某所でとつぜん灰野敬二さんを見かけたことがあって、(とつぜんってのも変だけど、あの方の容姿からして「とつぜん」がふさわしいとおもう。)CDも持っていなければ当時まだライヴにいったこともなかったくせにノープランで突進して握手してもらったことがあったけど、あのときとまったくおなじ。失礼きわまりない。
今回なんか、わたしってば話しかけたくせに早々に話す内容が全部底を尽きてしまって(だって、「テレビで見ました」「あこがれてます」くらいしかいえないもんな)、内澤さんに気をつかわせて、「近くに住んでるんですか?」なんていう無駄な質問をさせてしまった。
「いえ、近くじゃなくて、新宿区です」
だからなんだ。オマエはなんだ。オマエがどこに住もうが知ったこっちゃないのだ。
そんなわけで、内澤さんのブログ(右のサイドバーにもリンクがあります)にわたしのことを取り上げていただいてうれしかったので、あのときの挙動不審ぶりを弁解してみました。ありがとうございます、そしてあのときは失礼しました。世界屠畜紀行、純粋におもしろいです。もりもり読めます。肉食いてえ。
ああ、実はそのミーハーメーターふりきって突進したその日の帰りに買ったのでした。遅い。ほんとわたしってばアレです。失礼王子です。あ、王女にしとこうか。どっちゃでもええねん。

世界屠畜紀行

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にしさん、ありがとうございます。記事ちょっといじりました。