さんぽにっき

しごとがわりとゆるい日だったので、日曜のさんぽのことを書く。
私のまわりには、男子も女子も、古いものをいとおしむ人が多くてすごくうれしい。人の業の染みついた、骨董と呼べるほどではない、俗な、汚い、古いもの。家とか団地とか、古くて見捨てられたようなものほど好き。廃墟とはちょっとちがう。人の匂いが消えていないもの。
だから、私と友だち(私含め男子2名女子2名)は団地を見にいったのです。こういうさんぽを私は月に1度はします。同行してくれる人がいるのがうれしい。
日曜に見にいったのは、阿佐ヶ谷団地と荻窪団地。阿佐ヶ谷団地の美しさはなんどもおとずれてしっていたけど、いよいよ壊されるというのできっと見納めになるのでしょう。願わくば、壊したあとに作られるものが美しくありますように。


上、阿佐ヶ谷団地のうつくしさはいうまでもなし。
驚いたのは荻窪団地の奥にあった単身棟です。存在を知らなかった。
荻窪団地をさーっと見て、一部がフェンスで囲ってあるのでたぶんここも余命は短い。いい雰囲気だけど、わりとありがちな団地かな、なんて思って案内板を見たら、奥のほうにずいぶん大きな建物があるみたい。どうせだからそこもきちんと見てみようと思って行ったら、なんと、単身者専用の棟でした。管理人さんとおはなしをして、きちんと許可をとって写真を撮らせてもらった。




据えつけの洗濯板があります。ほかにも洗濯板は何枚か置いてあった。置いてあるってことは現役なんでしょう。

階段室と棟をつなぐ扉。

男子棟と女子棟がある。かつては、こっそり女子棟に忍びこみ…なんてドラマもあったかもしれない、いや、確実にあったんでしょう。

以下、管理人さんの話の要約。

もうね、建って50年ですよ。いまフェンスで囲ってる方をさきに壊して、新しいのを建てて、残る人はそっちに移動して、それからここを壊す予定だから、まああと2年くらいかな。
200室以上ありますよ。でもいまはもう十何人しかいないね。おふろはないですよ。だから銭湯ね。むかしは団地の中にもあったんだけど、数年前につぶれたねえ。だから、成宗湯(徒歩10分くらいある。遠い)。中は6帖ひとまですよ。トイレは共同。家賃は、まあ、安いですよ。2万いくらかな。なんといっても環境がいいよね。緑が多いし。ああ、建物壊したら…、うーん、ほとんど木も伐採しちゃうのかもね。
若い人ね、うーん、まあ少ししかいないね。(え……いくつくらいの方ですか?)まあ、50……ちょっとかな、ほとんどがもう70くらい。(私たちは絶句)住んでる人も、みんな40年以上ここにいるんだよ。もう危なくてね、トイレで倒れてたりするから、しじゅう見回りしますよ。

近代的な新しい団地にひとりで住みはじめて、そして、そして、そのまま50年、すみつづける。そういう人生がここに確かにあるんです。写真を撮ったからってなんなんだ。